古代人の生活へタイムスリップ:指圧
「古代人の生活へタイムスリップ」シリーズでは、中国五千年の知恵袋から、現代にも実践できるアイデアをご紹介します。
ある春の朝、神韻の一行はスイスのヌーシャテルにあるパサージュ劇場に到着。楽屋でウォーミングアップをした後、スイスと中華を融合した昼食をとり、すべてはいつも通りに事が運んでいるようだった。
しかしその日の午後、自分の踊る場所を確認するために舞台脇で待ち、列から離れ、動作を始める。すると突然…
「ベティー、血が出ているわよ!」と誰かに指摘された。その通りだった。鼻血が止まらない。初演前のダンサーの出血は見逃すべきことではない。すぐさま、地元のスタッフにソファーに寝かせられた。
「指圧のツボを知ってるわ」女性が口々に主張する。
「薬指よ」
「中指よ」
「でも血が出ているのとは反対側ね」
「首! 首!」
まもなく、身体のあらゆる場所を押されることとなった。この劇的ながらも微笑ましい混乱の中で、鼻血は止まった。さて、どのツボが効いたのだろうか?
もうひとつの古典芸術
多くの意味で、中国の伝統医学と現代の西洋医学は相容れない。中医学は、宇宙と人体が相互に作用することを信じる。宇宙は人体の巨大な現れであり、同時に宇宙の微小な現れは人体内に存在する。
私たちは、器官、骨組み、神経系などで分けることなく、人体全体を見る。「気」が身体の全域を網羅する経脈を通り、心身を調整する。
CTスキャン、外科手術支援ロボット、MRI(磁気共鳴画像)を用いずに、古代の中医学は直接患者の肌に触れた。指圧は身体のエネルギー流全体で詰まっているところを揉みほぐす。エネルギー流が適切であれば、全体的に幸福感、健康が保てる。今日の科学者は、生物電子インパルス、エンドルフィン、痛覚シグナル伝達に指圧を関連づけている。
中医学の一部として指圧には深い意味がある。一つひとつのツボにはその役割を表現する名称がついている。西洋人によって経脈のツボが数字とアルファベットで置き換えられるようになり、表面的な意味も深い意味も失われてしまった。ここに、知っておくと便利なツボをご紹介しよう。
知っておきたいツボ
一年の半年を移動で過ごす私たち、そして旅行を頻繁にされる方は、時に疲労困憊に悩まされることは避けられない。古代人はどのように痛みを和らげたのだろうか?
合谷―万能のツボ
位置:手の甲。親指と人さし指が合う位置。水かき部分より内側。
効能:鼻づまり/鼻水。頭痛。喉の痛み。くしゃみ/アレルギー症状。発熱/寒気。ストレス/筋肉の緊張緩和、抵抗力増加(*妊婦はこのツボを押さないこと。出産を促す恐れがある)
足三里―胃腸を整える
位置:ひざのお皿の外側にあるくぼみから、指4本分下。かかとを曲げるとこの位置の筋肉が出てくる。
効能:歩兵が3里歩くたびに身体全体の安寧とエネルギー流の補強のため、このツボを揉みほぐした。腹痛、消化不良を助ける。胃、脾臓、腸を融和する。血液と気の流れを促進。
内関―乗り物酔いの吐き気の予防
位置:前腕、手のひら側の手首のしわの中央から肘に向かって指幅三本のところ。親指側の腱と次の腱との間。
効能:乗り物酔いの吐き気、不安、腹かぜ、つわりなど。
神門―不眠症
位置:手のひら側の手首の横ジワの小指寄りの位置で、少しへこんでいるところ。
効能:神経、活発な思考、興奮からくる不眠症。心身をリラックスさせる。
それでは鼻血は? 身体は全体的につながっているので、ほとんどの症状に対して数え切れないほどのツボが用いられる。鼻血を抑える助けとなるツボは、頭からつま先まで複数あるが、そのうちの4つを紹介しよう。
睛明―目の疲れにも効く。位置:目頭から鼻の間。骨がくぼんでいるところ。
孔最―迎香と合わせて鼻炎を和らげる。位置:手首の横ジワより指7本のところ。迎香は鼻の左右のふくらみの両脇。
天府―肺経のツボ。位置:上腕部。脇の下から指三本下。力こぶのできる筋肉の中間にある溝。
隠白―血液の調整にも効く。位置:足の第一指親指の爪の生えぎわ外側へ1~2ミリいったところ。
尊い智慧
古代人の智慧は現代生活に大いに役立つ。現代人の知らないことを古代の人が知っているとは道理に合わないと思う方もいるかもしれない。しかし、現代の様々な機器の向こう側には古代の生活様式がある。簡素ながら実用的で効果的な生き方だ。
ご注意:これらのツボは試してみる程度にし、強く揉むようにしないでください。中国の伝統文化をご紹介するためのブログであり、医療を必要とする方への代替治療を提供するものではありません。関心を寄せていただくトピックとして扱われたもので、医療上のアドバイスではありません。
ベティー・ワン
寄稿者
2015年4月5日