スーパーヒーローを演じて
プリンシパル・ダンサー、ピオトル・ホワン
プリンシパル・ダンサー、ピオトル・ホワン(黄景州)の第一印象は、控えめな気品ある若者。しかし、話しているうちに一緒にいると楽しくなる性格だと分かった。過去4年にわたって『西遊記』の孫悟空を演じ、神韻の舞台での小道具で特にお気に入りは「金の如意棒」だと教えてくれた。
東アジアの文化圏で孫悟空を知らない者はいないだろう。あらゆる術を身につけ手に負えなくなったため、孫悟空は、五行山に五百年、封印されるが、観世音菩薩の救済によって天竺までの取経の旅で三蔵法師を守護する役を遣わされる。
『西遊記』は明朝の小説。100章から成り、四大古典小説の一つ。映画、漫画、演劇、コミックなど無数に採用されてきた。道徳的な教訓、素晴らしい冒険、超能力を持ちおどけた性格の孫悟空の話が満載されている。
ホワンに「孫悟空になるってどういうこと?」と尋ねてみた。孫悟空のどんなところを気に入っていますか?
ホワン:怖いもの知らずのところが好きです。天空の下に恐れるものは何もない。山も持ち上げられるかのようです。どんな大敵にも突進していきます。
スーパーヒーローと格付けされていますが、孫悟空の短所は?
ホワン:怖いもの知らずで自信満々の点は賞賛しますが、傲慢なところがあります。このため、時折、問題を起こします。でも、心配ご無用。最後には何でも克服しますね。
孫悟空の術の中で一番のお気に入りは?
ホワン:觔斗雲に乗り、どこへでも飛べること! 宙返りひとつで10万8千里の距離を飛ぶ得意技です。自分にもこの技があれば、ポーランドにひとっ飛びしていつでも両親に会えるのですが。(親孝行ですね)
他に自分が身につけたいと思う術は?
ホワン:髪の毛から分身する術はすごい。これがあれば、仕事が一度にこなせます! 神韻のダンスで見せるサイドキックは、それほどパワフルではありません。最も使えるパワーは、変化(へんげ)術かな? 孫悟空はよく、この術で敵を騙します。例えば三蔵法師を捕まえたと思っている敵の前で、突然自分の姿に戻り、敵が油断しているときにこてんぱんにやっつけるのです。
神韻で孫悟空を演じてから、悟空に対するイメージは変わりましたか?
ホワン:幼い頃は孫悟空は中国伝統文化のスーパーヒーローを代表するものだと思っていました。孫悟空と、欧米のスーパーマン、スパイダーマン、キャプテン・アメリカなどのスーパーヒーローとの違いを理解していませんでした。でも、今は違いが分かるようになりました。欧米のスーパーヒーローには、人間的な弱点があるようです。しかし、悟空は超常的な術を備え(かっこよく使う)だけでなく、全話を通して人生を変えるような苦難を乗り越えていきます。
当初、悟空は他の神々を見下し、好き勝手に暴れていました。自分を負かすものはいないと思っていました。ついには、悟空がまともになるようにと、阿彌陀佛が山に封じ込めます。そして500年後、悟空は修行の道を歩むように按配されます。中国に佛教を伝えるための天竺への取経の旅で、三蔵法師を守護するという重要な使命を遣わされるのです。旅路で悟空は81の苦難を克服していきます。話が重なるうちに、悟空はより謙虚になり、自分勝手な性格を改め、最後には悟りを得ます。欧米のスーパーヒーローで悟りを開くものはまだいないと思います。
孫悟空の話から何を学びますか?
ホワン:私達一人ひとりが取経の旅にあると思います。求める経典は異なり、人生の目的は人様々です。悟空の使命は、神韻の使命と比較することができます。金持ちになるとかトップのリストに上るとかは私達の目標ではありません。中国の伝統文化の美しさを世界に甦らせることが私たちの信念です。
神韻のダンサーには、悟空の七十二変化(へんげ)の術はありませんが、一人ひとり「81の苦難」を克服しながら進んでいます。時には困難で無理かと思うこともありますが、最後には悟空のように忍耐することで成功するのです。
孫悟空の役を演じる秘訣は?
ホワン:舞台では猿のようにふざけるわけには行きませんが、猿の鳴き声を出すことで、キャラに自己投入できます。
どんな音ですか?
ホワン:キーキキキー
以上が孫悟空についてのプリンシパル・ダンサーのピオトル・ホワンの話。傲慢で恐れを知らないスーパーヒーローが、無数の怪物と闘いながら自己を修める旅路を歩む。でもおっちょこちょいの猿だから、憎めない。
神韻2019年がいよいよ来日。スケジュールページをご覧ください。ピオトルの演じる悟空があなたの街にやってくるかもしれません。