神韻交響楽団の首席フルート奏者・李佳蓉へのインタビュー
一人の音楽家が自分自身を見つけた旅路
李佳蓉(リー・ジャーロン)の世界は、音楽という太陽の周りを回転しているかのようです。しかし、空はいつも快晴というわけではありませんでした。「なぜ音楽を選択したのだろう?」「この技能をどうやって人のために役立てられるのだろう?」「いったいどこに向かっているのだろう?」という疑問にさいなまれる日々が続きましたが、まもなく運命の扉が開き、新たな目的をもって李は音楽に取り組めるようになります。
問:いつ音楽を学び始めたのですか?
李:台湾で8歳のとき、両親が活発すぎる私を落ち着かせるために、ピアノを習わせました。3年後、台湾で「フルートの王女」と呼ばれるエリー・ライがディズニーのテーマソングを演奏している姿をテレビで見て素晴らしいと思い、フルートを習うことにしました。
世界一流の奏者になることを夢見て、一歩ずつ着実に目標に到達してきました。でも、修士課程のためにボストンに行ったら、世界が突然大きく見え、学ぶことがまだたくさんあると気づきました。
私は音楽家としての道、人生の目標に疑問を抱き始め、なぜ音楽を専攻したのだろうと問い続けました。フルートを学ぶきっかけとなったテレビ番組のことを思い返し、人に影響を与える音楽の力を考えました。自分の音楽を聴く人が、心配ごとを少しでも忘れられれば、と願いました。
問:演奏家としてどんな将来像を抱いていたのですか?
李:大学院の最終年は私の人生で最も複雑な一年でした。皆、卒業することに喜びを感じていましたが、私は次に何をしたらいいのか分からず泣いていました。仕事を見つけることは難しくありませんでしたが、音楽が自分にとって何を意味するのか悩み、人生の意義についても悩みました。自分の進む方向を見失っていましたが、音楽は人を助けるためのものだという感覚だけは残っていました。ただ、どうやって人を助けられるのか、全く見当がつきませんでした。
フルートを教えようと思いました。人を助け、幸せにすることができると思ったからです。将来のことは分かりませんでしたが、自分の能力を証明するために音楽を利用したくありませんでした。
問:どのようにして神韻芸術団に出逢ったのですか?
李:大学院卒業後、友人が神韻オーケストラの団員募集の手紙とウェブサイトのリンクを転送してくれました。「中国古典舞踊と音楽を通して中国の伝統文化を復興させる」という神韻の使命を読んだ時、目が輝き、「これだ!」と思いました。「文化の復興」の部分に気持ちを掻き立てられました。世界の人々の役に立つ、とても意義あることのように思えたのです。アーティストを紹介するビデオをいくつも見て、その誠実さに心を打たれました。
問:それでオーディションを受けたのですね。
李:ええ。オーディションでは神韻の曲を初見で演奏しました。中国の音楽を演奏したことはありませんでしたが、なにか親しみを感じる美しいメロディーでした。その場でつながった気がしました。
おそらく私の生い立ちから来ているのでしょう。人生の大半を西洋のクラシック音楽を学ぶことに費やしましたが、つまるところ、私は西洋人ではないのです。自分の文化ではありません。真髄から感じ取れないのです。中国と西洋の楽器を融合させた神韻の曲を初めて耳にしたとき、これこそ自分に本当に共鳴するものだと認識しました。長年の練習の積み重ねはこのためだったのだとようやく理解でき、解放された気がしました。
問:神韻公演を初めて鑑賞されたのはいつですか?
李:オーディションを受けた夜でした。リンカーン・センターで何度も泣きました。銅鑼の音で幕が開いた瞬間、エネルギーが体を貫き、涙が止まりませんでした。それほどまでに感動した公演はかつてありませんでした。
公演の後、隣に座っていた友人に次のように話したのを覚えています。「中華文化がこれほど美しく、西洋社会でこれほど高水準のショーとして幅広く公演されていることに誇りを感じるわ」
オーディションを受けただけで、合格したかも分かりませんでした。公演を見ながら、神韻の一員になれるならこれほど光栄なことはないと、期待に胸が高まりました。
カーテンコールでまた涙が止まらなくなりました。ダンサーが舞台で手を振り、オーケストラピットの演奏者も立ち上がって観客の拍手に応えています。それを客席から眺めながら、自分もオーケストラピットから「さようなら。また来年!」と手を振れるようになりたいと強く願っていました。
問:2012年に神韻に入団され、数カ月後にはカーネギー・ホールで交響楽団としてのデビューに参加されましたね。
李:初めてカーネギー・ホールで演奏しました。「ついにこの日が来た。それもこんなに早く」と思ったことを覚えています。
神韻交響楽団の初めてのコンサートでもありました。コンサートの前夜は正直言って、とても興奮し、ちょっと緊張しました。翌日は歴史に残る日になることを、皆が認識していました。一人ひとりがこの機会を大切にしており、皆の心は完全に一つでした。
公演中、とても不思議な感覚になりました。8小節間、私が演奏しない部分があり、目を閉じて静かに座っていました。すると驚いたことに、音楽がひとりでに流れているように感じたのです。私たちが演奏しているのではなく、神々が私たちを助けているようでした。多くの団員も同じように感じていました。初めて体験することで、リハーサルではこのような状態、雰囲気には達しませんでした。
問:神韻に加わって2年になりますが、メンバーになって気付いたことはありますか?
李:演奏中、全ての団員が集中する状態に入ると、巨大なエネルギーを感じます。私個人がエンターテイメントとして人々を集めて演奏したときのエネルギーを遥かに超えたものです。自分以上の何かとてつもなく大きなものを感じます。
演奏に心から打ち込めば、観客はすぐに感じ取ってくれます。わずか2年で自分がアーティストとして昇華したと感じています。音楽、人生の本当の目的をみつけました。常に次のレベルに達していく過程を楽しんでいます。終わりのない旅路ですが、楽しい旅路でもあります。
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