神韻の中国古典舞踊 グラナダでデビュー
サンタバーバラ・インディペンデント紙(米カリフォルニアの地元紙)掲載記事より
現在、中国の伝統を維持している芸術家や団体の多くは、中国国外に拠点を置いている。神韻芸術団もこれに含まれる。同芸術団は、8年前にニューヨーク北部で非営利団体として設立され、中国古典舞踊の技術と芸術を維持し、この芸術形態の美しさを世界の観客に伝えることを目標に掲げている。3月29日、サンタバーバラでデビューを果たした。
この芸術団は米国を拠点としているため、正統な中国の芸術を表現するのは難しいと思われるかもしれない。しかし、中国国内では、共産主義政権の影響により芸術的表現が今も制限されている。神韻芸術団は、現代の中国本土では採用されていない手法を用いて中国古典舞踊の伝統を継承していくことを誇りとしている。
最近の電話取材に応じた、神韻公演の司会者ケリー・ウェン氏は次のように語っている。「文化大革命は、反文化の革命でした。寺院、仏像、書籍は燃やされ破壊されました。多くの芸術は禁止され、芸術家たちにとっては晴天の霹靂のような迫害でした。しかし、心の中に伝統・伝承文化を秘めて海外に渡り、創作活動を続ける機会を得たのです」
今日の中国古典舞踊の中核の一つとして、ニューヨークのカドバックビルにある飛天芸術学院が挙げられる。ここで神韻のメンバーの多くが、入団前の数年にわたる厳しいトレーニングを受ける。ウェン氏によると、現在、中国で教えられている古典舞踊のほとんどは、 西洋のバレエ、ジャズ、その他の異質な芸術形態を融合させているが、飛天芸術学院では、正統な中国古典舞踊の保存に真剣に取り組んでいるという。
彼女は話を続ける。「中国古典舞踊は、代々受け継がれてきたもので、極めて系統的な舞踊形式です。皇帝の宮廷舞踊として始まり、包括的な舞踊体系へと完成していきました。バレエと似ていますが、感情表現がずっと豊かです」。サンタバーバラで披露される神韻の演目の多くは古代中国の伝説を表現するもので、唸らせるようなダンサーの技法だけでなく、ダンサーの演技力も問われる。
「一人ひとりのダンサーが持っている身韻の要素、つまり、しぐさや息づかいは異なります。このため、それぞれのダンサーが異なる趣を舞台にもたらします」と、ウェン氏は語る。
神韻芸術団のダンサーの大多数は中国人だが、台湾、フランス、イギリス、アメリカなど、中国本土以外の国で育った。今回のグラナダ公演で演奏する神韻交響楽団の団員も同様だ。オーケストラは、二本の弦の二胡、指ではじく琵琶などの中国の伝統楽器と、西洋の楽器から構成されている。
演奏家、ダンサー、制作スタッフなどを含め、神韻芸術団は総勢約100人。芸術団の衣装デザイナーは、中国の様々な時代の民族衣装を丹念に調べて、独自に手作りで衣装を制作している。素材の多くは絹である。
視覚の壮観さを高めるため、バックスクリーン映像が用いられている。今モンゴルの広大な草原にいたかと思うと、唐や清の王朝の豪華な宮廷へと舞台が一変し、中国の異なる地域、異なる時代に観客を誘う。
2時間の舞台は実に広範囲にわたる題材が取り上げられる。そのため、司会者の存在は観客にとって有り難い。世界中の観客に最高の中国文化を紹介することは、この上なく名誉なことであるとウェン氏は語る。
「共産党政権下で育った中国の若者の多くは、古代文化へのつながりを失ってしまいました。幸いにも現在、これらの伝統が復活されています。芸術に対してどんなに規制を設けても、アーティストの表現の自由を止めることはできません」と、ウェン氏は締めくくった。
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神韻サンタバーバラ公演はグラナダ劇場で3月29、30日に行われる。