花が意味するもの
数年にわたる神韻の公演によって観客および私たち団員は中国文明の様々な景観を眺望しました。舞台が古代の宮廷や天上の世界であっても、時には私たちの作品は「花」というシンプルなテーマを中心に展開します。
古代中国では花に深い意味を託しました。 花のイメージは、芸術、文学、言論の世界に共通するモチーフとして登場します。 汎用されるモチーフではありますが、中国の文化ではそれぞれの花が持つ深い意味を高く尊重します。ここ数年にわたり神韻の舞台で取り上げられた花をご紹介しましょう。
梅の花
淡いピンクの花びらの慎ましい梅の花は、桜の花と間違えられ易いのですが、梅の花は真冬に開花します。霜や雪の中で明るくたくましく咲き誇る梅の花は、困難に直面した時に忍耐と勇気をもって立ち向かう象徴として人々を鼓舞してきました。芸術の面では、梅の花は常緑樹の松と竹と並んで描写されることがよくあり、揺るぎない意志、誠実 、謙虚という価値観を表します。 梅の花が最も強く象徴するものは「春がもうすぐ来る」という希望と約束でしょう。
牡丹
あでやかで豪華な牡丹は、長年にわたり花の王国を司るとされてきました。もともと薬草として栽培されましたが、その類ない美しさから隋と唐の王朝では、宮廷の庭の花として採用されました。宗の時代、牡丹の栽培は 中国全土に広がり、「高貴」「 優雅」の息づく象徴となりました。「富と栄誉の花」「花の王」としても知られ、どの牡丹も甘い香りを放ちます。
蓮の花
蓮の花は「和の花」。中国語では「荷花」と呼ばれ、「荷」は「和」と同音(フー)です。泥の底から成長し、明るい色の花を咲かせます。中国での佛教の普及は、 佛と菩薩が蓮の花の上に鎮座する姿を描いた芸術作品を生み出し、汚れのない蓮の資質が浮き彫りにされました。こうして蓮の花は純粋な心と吉祥の象徴となったのです。静謐な水の中、緑の葉の間で静かに成長する姿は、俗世界を超越した穏やかで霊妙な美しさを反映しています。
蘭
蘭は神韻の演目のテーマに取り上げられたことはありませんが、舞台のあちらこちらで蘭が見受けられます。中国古典舞踊における女性ダンサーの基本的な手のポジションのひとつは「蘭の手」と呼ばれます。この形は中指と親指を折り曲げ、掌の中央あたりで合わせるもので、優しい乙女あるいは天女のポーズです。「蘭の手」は女性らしい優雅さの究極的な表現です。
話題は舞台から離れますが、中国の哲学者、孔子は蘭を徳の高い紳士に見立てました。困難に遭ったとき、孔子は森の中で蘭を見つけました。香りを楽しむものとていない森の中で香り高く咲く姿は、 誰がどう思おうとも自分の信念を曲げない貴公子を思い起こさせたのです。
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どんな形であれ、美しい輝きを放つ様々な花は、中国文化では、美、徳性、誠実、勇気、純粋さ、希望の化身とみなされており、中国の古代社会を内面的にも外観的にも豊かにしてきました。
ジェイド・ジェン(詹怡静)
ダンサー
2013年5月8日