私の「イノシシ年」
「旧正月おめでとうございます」とようやく言える。なぜ「ようやく」なのか? この旧正月の7ヶ月前から全ては始まっていたからだ。
リハーサルの始まり
昨年の6月、神韻の団員たちはツアー後の短いながら感慨深いホリデーを楽しんだ。世界中におよぶ団員の出身地や、夢に見た憧れの地など、旅先は実に様々だった。
私はスロヴァキアを探索。タトラ山脈にある木造のコリバと呼ばれる民宿でのんびりと過ごし、遠い親戚を訪れた。威喝的な熊から愛らしいハリネズミまで、予期せぬ野生の動物に出くわし、巨大な氷の洞窟を探索し、お城めぐりをして、実がたわわに垂れ下がる枝から朝露で覆われた酸っぱいチェリーを頬張る。実においしい。(有機農法、遺伝子組換えは一切利用しない食べ物がいっぱい!)
神韻のダンサーや友人から、モロッコの砂漠、ギリシャの遺跡、イタリアの隠れた宝物、ニュージーランドの居間などの写真を見たり話を聞いたりした。
今回の冒険では、一行は「女人国」の子母河(しぼが)を発見。この水を一滴でも飲むと誰でも妊娠する。もとに戻すための秘薬は女王だけが持っているが、女王はサソリの精に取り憑かれている。最後に孫悟空がサソリを打ちのめし、三蔵法師は囚われの身から救われ、猪八戒の妊娠も解ける。
猪八戒との出逢い
「女人国」では、最初の場面で猪八戒に出逢う少女の役も演じた。舞台の下手から黄色の風車を持ってスキップして出てくると、オーケストラの音と同時に、猪八戒と「バーン」とぶつかってしまう。びっくりしておばあちゃんの後ろに隠れる。そしてストーリーが始まる。
この動きは簡単ではなかった。リハーサルが始まった時、どうしても猪八戒にぶつかれなかったのだ。いつも数センチ前で止まってしまう。ある日、振付師の古縁が我々二人を呼びつけ、私に言った。
「思いっきりぶつかるんだ。実際に。今、ぶつかれ! バーンと」
猪八戒から60センチも離れていないのに、有無を言わせぬ振付師に命じられ、躊躇の余地はなかった。60センチでは、助走もできない。とにかく目をつむって、思いっきり体当りした。「やれやれ」壁を乗り越えた。ありがとう。古縁!
この瞬間以降、バンと体当たりできるようになった。リハーサルの初期段階では、最高の効果を出すために、指揮者がコントロールする音楽のテンポ、猪八戒の最適な立ち位置、周辺の視界を遮る下からの照明、私の動き、猪八戒のスタンス、私のぶつかる速度など、数多くの要因が絡まっていた。オーケストラと合同の最初の舞台リハーサルでは、絶対にうまくぶつかると決意していた。しかし、意識しすぎてしまい、ぶつかりはしたものの、インパクトが強すぎて跳ね返り、猪八戒の下に伏してしまった。猪八戒が振り返ると、ショックを受けた小娘がまだ横たわっていた。ショックの受け方が通常よりひどいようだ…私の視界もいつもよりかなり下からの目線だった。
場面が終わっても、まだショックは癒えなかった。しかし、私の個人的なストレスに気づいたものはいない。客席から観ていた振付師は何も言わなかった。猪八戒も何も言わなかった。「おばあちゃん」でさえ、「動きを変えたんだと思ったわ。すごく迫力があった」というコメントだった。
なぜだろう?
この小さな体験から、突発的な役柄というものは存在しないことを学んだ。自分の役柄、動き、演じ方、タイミング、音楽、他のダンサーとの協調、自分との対話すべてに、常に全霊を傾けて考慮する必要があるのだ。準備なく舞台に立って、成り行き任せで最善の結果を望むことはできない。
リハーサルを通して、猪八戒に体当たりしなければならなかった回数、大笑いに終わった体当たり稽古の回数は計り知れない。神韻ツアー2019では米国、アジア太平洋全域で100回以上の公演が行われる。私にとっては猪年大吉(zhū nián dà jí)「イノシシの年に大吉を」でなく、猪年打擊(zhū nián dǎ jī)「イノシシの年に体当たり」だ。
今年の旧正月は福岡市で迎えた。皆様そして女人国の少女たちへ:体当りして大成功を収めるような新年になりますように!
リハーサルの始まり
昨年の6月、神韻の団員たちはツアー後の短いながら感慨深いホリデーを楽しんだ。世界中におよぶ団員の出身地や、夢に見た憧れの地など、旅先は実に様々だった。
私はスロヴァキアを探索。タトラ山脈にある木造のコリバと呼ばれる民宿でのんびりと過ごし、遠い親戚を訪れた。威喝的な熊から愛らしいハリネズミまで、予期せぬ野生の動物に出くわし、巨大な氷の洞窟を探索し、お城めぐりをして、実がたわわに垂れ下がる枝から朝露で覆われた酸っぱいチェリーを頬張る。実においしい。(有機農法、遺伝子組換えは一切利用しない食べ物がいっぱい!)
神韻のダンサーや友人から、モロッコの砂漠、ギリシャの遺跡、イタリアの隠れた宝物、ニュージーランドの居間などの写真を見たり話を聞いたりした。
話が脱線した。2週間のホリデーのあと、皆ニューヨークに戻り、2019年の演目の準備が始まった。リハーサルでの最初のダンスの1つは、『西遊記』からの一話を基にした演目だ。神韻の振付師・古縁(グー・ユェン)の制作、「女人国」では、 三蔵法師と孫悟空、沙悟浄、猪八戒が女性だけが住む遠隔の地に到着する。
イノシシの年に因んで、猪八戒は2019年の演目では特別の役が与えられた(訳注:中国語の「猪」は豚の意味もあり、中国語では今年は「豚の年」)。それでは猪八戒の性格とは? 半人半豚で、人格的には食いしん坊でコミカルな典型的な豚である。『西遊記』の原作では猪八戒は次のように描写されている。
「猪八戒には心配事はなかった。腹はゆったりとし、食べられるものは何でも食べた。玉の粉末入りご飯、蒸した饅頭、蒸し菓子、マッシュルーム、シイタケ、タケノコ、キクラゲ、キュウリ、寒天、海苔、蕪、里芋、大根、山芋、百合根だろうがなんだろうが、全てを一度に飲み込んだ。そして6~7杯の酒をのみ、『もう一杯。もっと大きい盃はないのか? もっと酒をくれ。そしたら出発してやらねばならないことをやろう』と叫んだ」
WJF Jenner 英訳(北京 1955年)Collinson Fair出版 の抜粋より邦訳猪八戒との出逢い
「女人国」では、最初の場面で猪八戒に出逢う少女の役も演じた。舞台の下手から黄色の風車を持ってスキップして出てくると、オーケストラの音と同時に、猪八戒と「バーン」とぶつかってしまう。びっくりしておばあちゃんの後ろに隠れる。そしてストーリーが始まる。
この動きは簡単ではなかった。リハーサルが始まった時、どうしても猪八戒にぶつかれなかったのだ。いつも数センチ前で止まってしまう。ある日、振付師の古縁が我々二人を呼びつけ、私に言った。
「思いっきりぶつかるんだ。実際に。今、ぶつかれ! バーンと」
猪八戒から60センチも離れていないのに、有無を言わせぬ振付師に命じられ、躊躇の余地はなかった。60センチでは、助走もできない。とにかく目をつむって、思いっきり体当りした。「やれやれ」壁を乗り越えた。ありがとう。古縁!
この瞬間以降、バンと体当たりできるようになった。リハーサルの初期段階では、最高の効果を出すために、指揮者がコントロールする音楽のテンポ、猪八戒の最適な立ち位置、周辺の視界を遮る下からの照明、私の動き、猪八戒のスタンス、私のぶつかる速度など、数多くの要因が絡まっていた。オーケストラと合同の最初の舞台リハーサルでは、絶対にうまくぶつかると決意していた。しかし、意識しすぎてしまい、ぶつかりはしたものの、インパクトが強すぎて跳ね返り、猪八戒の下に伏してしまった。猪八戒が振り返ると、ショックを受けた小娘がまだ横たわっていた。ショックの受け方が通常よりひどいようだ…私の視界もいつもよりかなり下からの目線だった。
場面が終わっても、まだショックは癒えなかった。しかし、私の個人的なストレスに気づいたものはいない。客席から観ていた振付師は何も言わなかった。猪八戒も何も言わなかった。「おばあちゃん」でさえ、「動きを変えたんだと思ったわ。すごく迫力があった」というコメントだった。
なぜだろう?
この小さな体験から、突発的な役柄というものは存在しないことを学んだ。自分の役柄、動き、演じ方、タイミング、音楽、他のダンサーとの協調、自分との対話すべてに、常に全霊を傾けて考慮する必要があるのだ。準備なく舞台に立って、成り行き任せで最善の結果を望むことはできない。
リハーサルを通して、猪八戒に体当たりしなければならなかった回数、大笑いに終わった体当たり稽古の回数は計り知れない。神韻ツアー2019では米国、アジア太平洋全域で100回以上の公演が行われる。私にとっては猪年大吉(zhū nián dà jí)「イノシシの年に大吉を」でなく、猪年打擊(zhū nián dǎ jī)「イノシシの年に体当たり」だ。
今年の旧正月は福岡市で迎えた。皆様そして女人国の少女たちへ:体当りして大成功を収めるような新年になりますように!
私の「イノシシ年」